Friday 14 December 2012

生産者側に立って見て感じること。

これまで都会育ちで、自分も、自分の周りも、製造業/サービス業/はたまた芸術的な分野といった界隈におり、所謂第一次産業(農業・漁業)に関わる・タッチする経験がなかった。

生き物を相手にしているから休めないとか、力仕事が多そうとか、天候などの逆らえない事項に左右されて大変そうとか、日本に関して言えば、海外の輸入品と戦わなくてはいけなくて大変そうとか、色々な印象はあっても(恥ずかしいほど幼稚な印象だけれど。。)、その仕事の本質や、そこで働いている人達のことを知る機会は殆どなかった。

そんな自分が、何の因果か縁あって、牧場に関わるようになり、色々と学ぶことが多い。また一方で、この立場になってからより目につくようになったのが、一部の偏った見方の意見に洗脳され、正しく状況を注視しないまま、農業・酪農の生産者側のやり方・姿勢をやみくもに批判する一般の人の書き込み。 非常にやるせない。そんな訳で、未だ未だ中途半端な学びではあるが、少し感じていることを書いてみようかという気持ちになった。

まず、第一次産業は、かなり人間が生きて行く上で、必要なものを生み出している産業のはずなのだが、これで生活を成り立たせるのは本当に大変。世の中に出回っている沢山の物・サービスの価格のなかで、その存在意義と労働度合いに見合ったものになっていないような気がして、少し切なくなってしまうほど。

例えば農場。我が牧場の羊、質の良い羊を生産することをモットーにしているのだが、生き物を相手にするので、質の良いものに育てるには、驚くほど手がかかる。休める暇がない。また世話をする人間は、「あ、今日は嵐のような風雨で、外でるのやだな」とか、「ちょっと熱っぽいから休みたいなぁ」という理屈が通じない。相手は待ってくれない。手が掛るのは勿論、誰か完全に自分の代わりをしてくれる人が見つからない限り、全く休めない。

さらには、それなりに評判が確立されているらしい我が牧場の羊たちだが、これだけ手塩にかけ、評判がよくとも、1匹売ると、どれ位なのか。自分の仕事に置き換えてみると、本当に驚く。例えば、ここ最近請け負っている短い翻訳の仕事を2-3本した金額。短期集中でやれば1週間半で稼いでしまう額。更にひどい比較は、昔やっていた仕事。お客様に請求していた自分の単価の2-3時間分。(実際手取りは会社ががっちりと沢山搾取していたので、本人のポケットには入っていないが・・・)

そしてふと思う。自分がやってきた仕事って、一体何の役に立っていたのか/いるのか。自分が翻訳した書類は、極端な話、書類は英語のままで、説明者が内容を理解して日本語で話せば成り立つ。切りつめるとするとまっさきにばっさり切れる作業。その他の仕事も、どれほど支払われていた給与に見合うほどの価値を出していたのかと思わず考えてしまう。(自分で自分の仕事をこんな言いようするのも切ないけれど・・・)必死で仕事をしていた時には、お客様が自分たちに支払って下さっているお金以上の価値を出す結果を出そうと頑張っていたけれど、その目指していた「価値」に対して今更ながら改めて違和感を感じ始める。(「改めて」と書いたのは、違った意味で違和感を感じ、実は一時とてものめり込んでやっていたとある職を辞め、転職したため)

また1個人としてという意味でも、何と表現してよいのか、人間としての成熟度などの点でも、強い人が多いように感じる。ここで働いている人達(多くは財政的に人を雇うのが難しいので、牧場主=メイン働き手で、子供たちが手伝うという形が多い)は、非常に前向きで、実直。またお互いの農場間での助け合いなどもあるので、暖かいハートの持ち主たち。またしっかりとやっていくために知恵や知識もしっかりあるので、大変なことがあっても悲壮感はない。そして何より自分の仕事に心から誇りを持っている。

色々ととりとめなく書いてしまったが、実際に経験してみると、感じること・知ることが沢山出てくる。場合によっては、自分が当たり前と思っていたことが覆ることだってある。一方的に”専門家”と称する人達が言う言葉は、ついついまるごと信頼してしまいがちだが、できる限り自分自身で少しでも調べる・知る・経験などをして、色々な視点を見ることの大切さも改めて感じる、今日この頃。(自分への戒めも含め!)

2 comments:

Anonymous said...

はじめまして。Rimiと申します。
今年8月からオランダで生活を始めたものの、申し込んだ語学クラスがキャンセルになったりと、なかなか始められないオランダ語習得を何とかしなければ、と色々な方のブログを読んでこちらに辿り着きました。
語学の話以外もとても興味深く、昨夜から今朝にかけて一気に読ませていただきました。中でも特に今回のこの記事は心に響きました。りすねこさんの心の変化にも嬉しく思いながら(偉そうでスミマセン)。価値観は国だけでなく仕事の内容でも随分と違って来る物だと感じています。更に自然と対峙している人々は地に足がついている気がします。そんな環境にいるりすねこさんは素晴らしい体験をされているのですね。
これからもブログの更新を楽しみにしています。

りすねこ said...

Rimiさま、初めまして。

このたびはブログを読んでいただき、有難うございます!

私個人が、その時その時に感じたことをつたない文章で書いているので、それを見て色々な感じ方をされる方もいらっしゃるかとは思うのですが、Rimiさんが感じたことをコメントしてくださって、本当に嬉しく思います。

本当はほんのたまになのですが、今居る自分の状態をあらぬ理由で悲観的に捉えてしまうことがあるのですが、Rimiさんのコメントで元気がでました!

海外で暮らしていると、思うように行かないことも多々ありますが、後で振り返ると、何か意味があって寄り道をすることになっていることもあるかと思います。Rimiさんも、オランダ語学習のこと近いうちにうまく進みはじめること、願っています!

少しずつまた自分の体験・感じたことを書いていければと思いますので、またご訪問いただけると嬉しいです。引き続き、よろしくお願いします。